ある三味線弾きの
つぶやき



折々に錦糸さんからのメッセージをいただいて、紹介しています。



2014年08月31日

今年も、秋の素浄瑠璃の会で演奏することとなりました。 
『恋女房染分手綱』。
端場(はば)の「道中双六」から切場(きりば)の「重の井子別れ」まで、通して素浄瑠璃で演奏したのは、二十年前になります。
その時の太夫も、嶋大夫師匠でした。

『恋女房染分手綱』。
そうです、住大夫師匠とこの作品を何度も務めましたが、「沓掛村の段」をもっぱらとしました。
銀屏風の似合う地味な場面です。
今回務めますのは、作品中最も派手な段。金屏風の場面です。
芸風を変えての演奏です。
心機一転の舞台、ぜひ、御耳よせください。



2012年2月7日

この頃、とみに頭髪が後退してきましたので、掲載の写真を取り替えます。
ただ今、日々育毛につとめておりますので、毛髪が復活しましたら、再び写真を変えさせてもらいます。



2011年8月10日

サイトファンの皆様、大変ご無沙汰いたしました。
この度、私、芸術選奨文部科学大臣賞、並びに藝術院賞受賞の栄に浴し、管理人ルネさんから「何か呟け」とのことで、久しぶりにつぶやいています。

エ〜、夏の公演は、『心中宵庚申』の「上田村の段」を務めました。
これは、近松門左衛門の名作ですが、難曲中の難曲(覚えにくい、間違えやすい)でもあり、気しんどうな毎日でしたが、一昨日無事に千穐楽を迎え、これから私も楽しい夏休みです。
12日から恒例の木曽の御嶽山へ、友人等総勢9名で登山に行きます。
此のお山は不思議なパワーがあって、登山メンバーから海外栄転2名、寿2名に続いて、私の受賞とミラクルパワー満開です!
登山は無心になれるから、いいですね。
芸につながるのではないかと思います。

最後に受賞に際して、住大夫師匠の一言、
「お客さんの見る目、聞く耳が違ってくるで!!」
はい、お師匠はん、これからも勉強いたします。



2005年9月4日

九月に入っても、相変わらず暑いでんなァ。
おまけに大型台風が近づいている様子。
六日に、青春十八キップでのんびり上京しようと目論んでいますが、どうなりますやら。

さて、九月は御存知、「寺子屋」です。
私は前半の“源蔵戻り”から、“首実検”までを勤めます。
四十分ほどですが、西風の地味で重くるしい浄瑠璃。
“呼び出し”と呼ばれる部分以外は、緊張の連続です。
後半は一転して、東風の華やかな演奏となり、哀れな内容を、一層引き立てる演出になっています。

「せまじきものは宮仕へ」という名文句、御存知ですよね?
私等の若い時分、師匠に用事を云ひ付けられると、「せまじき……」とよく云ったものです。
皆様の職場でも使えますぞ!

    注・“呼び出し”  寺子をいちいち改めて、迎えに来た親に返す場面。



2005年7月15日

大阪は梅雨あけ前から真夏の暑さ、梅雨前線はどこへ行ってしまったのだ?
近年、季節感が薄れてきました。困った事です。
その内、日本もハワイの様な、常夏の島になるのでは。

サア、明日から夏休み公演です。
文楽には季節感がありますよ。
芸人の衣装が、夏の芝居に限り、変わります。
白の麻の着附に、絽や紗の肩衣、袴も麻です。
見た目はすずし気ですが、着ていると結構暑い。
マア、一種のサービスですか。

今回は「桂川の帯屋」を勤めます。
本来一段通して演奏せねばならんのですが、暑い時期なので後半だけです。
ごめんなさい。

帯屋という演目は、俗に「お半長(はんちょう)」と呼ばれる位ポピュラーなもので、上方落語の題材にもなっています。
「胴乱の幸助」という噺、ご存知ありませんか?
この噺、よう出来ていて面白いのですが、帯屋を知らんとよう分からん噺です。

サア、この夏の暑気払いは、文楽で住大夫師の帯屋を楽しんで、帰りに、桂米朝師の「胴乱の幸助」のCD買うて、一日に二度楽しむ、これで決まり!

    注・胴乱とは、大きながま口のこと。



2005年5月3日

風薫る五月となりましたが,日差しは真夏の様です。これも地球温暖化の影響でしょうか?

さて、七日から東京公演ですが、時代物と世話物の名作を並べました。
昼は「近江源氏」と「冥途の飛脚」、夜が「先代萩」に「桂川」。
これ以上ないというくらい贅沢な演目です。

私は先月にひき続き、「先代萩」の“御殿”を勤めさせていただきます。
登場人物は、乳母の政岡に、鶴喜代君と千松の三人。
他に、雀と狆(チン)だけです。

大夫さんにとって大変気しんどうな役で、政岡は常に気品を忘れず、腹には気丈を持ち、乳母として、母としての情愛を出さねばなりません。
子役の二人は、音程とテンポで語り分けます。
鶴喜代君が少し低目でゆっくりとしたテンポ。千松はその反対です。

三味線弾きも同様に、気の張る浄瑠璃なのですが、雀の鳴き声やら羽ばたきなどを表現するところが何ヶ所もあり、腕の見せ所なのですが、いかが聞こえますでしょうか?
お楽しみに。

浄瑠璃の中に、「忠(ちゅう)と教へる親鳥の」という文章があるので、この時代の雀は「忠」と鳴いていたのでしょうか?
この三月からベランダで雀の餌付けをしています。
餌が無くなると催促をしたり、なかなか可愛いものですが、よその雀が来ると“大ゲンカ”。
ベランダは“フンだらけ”。
うちの雀は「不忠」と鳴いている様です。

ちなみに、先代萩のモデルになった仙台藩の家紋は、「竹に雀」です。



2005年3月31日

いよいよ春本番目前となりました。
御無沙汰いたしております、錦糸です。

先月二十三日、大雨の中、府知事公館へ、大阪舞台芸術賞を頂戴しに参りました。
皆様からお祝いのメールやらファックスをいただき、この場を借りて御礼申し上げます。
ありがとうございました。

さて、四月公演は、先代萩の「御殿」です。
御存じの通り、名曲中の名曲、芝居としても大名作です。
私の勤めます前半は通称「ままたき」、後半は「政岡忠義」と呼ばれ、見所、聞き所の多い狂言で、文楽の魅力をたっぷり味わっていただけると思います。
お楽しみに。

政岡の子、千松のセリフに、「お腹がすいても、ひもじうない」という名文句があるのですが、先日、ルネ氏の御母堂と御殿の話をしていると、「戦時中にはよく言ったものよ」との事。
浄瑠璃が浸透していたのですね。
ダイエット中の方々、「お腹がすいても、ひもじうない」で、がんばってください!

では文楽劇場で、お待ちしております。



2005年2月11日

お待たせ致しました。
正月公演にひき続き、「沼津」を上演いたします。
上演時間、約1時間17、8分。
時代世話なので、体力的にさほどきついことはありませんが、テンポも早く、場面転換も多く、心理描写や情景描写に気を遣い、精神的にはくたびれる出し物です。

毎日同じ演奏をしたいと思っているのですが、これがなかなか……。
お客様の入りが悪かったり、反応がなかったり、途中でトイレに立たれたりすると、こちらも滅入ってしまって、具合が悪い。
反対に、大入りで客席に活気があると、気合も入り、乗っていけます。
(決して他力本願ではありませんが)
特に、「お米のクドキ」で拍手がくると、「三味線弾きしていて良かった!」と思いますな、ホンマ!

おかげ様で、第二部は全日売り切れ。
一部と三部はまだ残券があるようですが、どれも楽しみな演目なので、こちらもよろしくお願いいたします。



2005年1月1日

あけまして、おめでとうございます。
旧年中は錦糸サイトに御贔屓を賜り、誠にありがとうございました。
本年も昨年に増して、活発な御意見交換、楽しみにしております。
よろしくお願いいたします。

さて、初春公演は、「沼津」で幕を開けます。
本公演では襲名以来となり、大好きな狂言の一つです。

前半の部分は、通称“小揚(こあげ)”と呼ばれ、変化をつけて、テンポ良くはこび、「お米は一人」からは一転して暗闇を強調し、ウレイをもって演奏します。
千本松原からは、住大夫師の独断場。
泣かせまっせ!

人形も、玉男師の十兵衛、簑助師のお米と、最高の配役です。

正月から、親子の情にどっぷりとつかりたい方は、文楽劇場にお越し下さい。
来られない方は、二月の東京公演まで待っててね。



2004年12月1日

早いもので今年もあと一ケ月。一年なんてあっという間ですね。
さて、十二月は若手公演で、住大夫師匠のお弟子さんの文字久大夫君と、菅原の三段目、「桜丸切腹」を勤めます。
連日、住大夫師匠の猛ゲイコ。いかが相成りますか?

東京公演中に、恒例の正月のテレビ収録。
これは加賀見山の「草履打」を20分程。元旦に放送だそうです。

東京公演後に博多へ飛び、12月22、23日は、文楽初の博多座公演に臨みます。
勤めるのは「寺子屋」の首実検。
初めての博多座、どんな小屋か楽しみにしています。

終えて大阪。
正月の舞台稽古と続いて、28日に御用納め。
これで文楽での私の一年はおしまいです。

ところで、ここで提案です。
この一年、あなたの一番心に残った舞台はなんでしょう。
腹の立った舞台はありませんでしたか。
一年を通しての、客席に届いた印象を聞きたい。
ルネさん、どうしたらいい?



2004年10月18日

いよいよ素浄瑠璃の会も近づき、尻に火が付いて参りました。えらいこっちゃ!
連日、佐太村と、24日に岡崎で演奏する「十二段」(復曲)の稽古でフラフラ。

佐太村は何遍も勤めさせていただきましたが、これがなかなかの難物。
「河内地」やら「此太夫の踏みはづしの間」など口伝があり、考え出すとバチが下りなくなります。

こういう時は“神頼み”とばかり、先日、佐太の天満宮へお参りに。
このお社は、白太夫の屋敷跡に建立されたそうで、小ぢんまりとした、上品なお社です。
お暇な方、ご案内いたしますぞ。
(守口市のはづれ、淀川沿いにあります)



2004年9月4日

猛暑の後、超大型台風来襲!
ほうほうの体で内子座から逃げ帰って来ました。
このところの異常気象で、日本人の季節感もおかしくなりそうですね。
芝居の上では、秋のお月見時分の風情をたっぷりと味わっていただきましょう。

九月公演は、「双蝶々」の通しで、「引窓の段」を勤めます。
「端場」は、通称「かけ椀」と呼ばれる程の重要な場面です。
二人侍の出からが「切場」になります。
全体に地味な浄瑠璃ですが、情味あふれる一段です。

又、引窓の開け閉めによる、真の闇と月明かりの明暗を、浄瑠璃で表現するのが眼目。
コリャ神経遣いまっせ。
どうぞお楽しみに。

“おまけ”
これだけは頭に入れて芝居に行きませう。
九つ−「0時」  七つ半−「五時」  六つ−「六時」



2004年7月15日

いよいよ夏の公演が始まります。
今回は第二部で、「生写朝顔話 宿屋の段」を勤めます。
夏らしい、いい出し物ですな!

夏芝居では、白の舞台衣装を着ます。
これは文楽独特です。
麻の白の着物を着て、絽や紗の肩衣(かたぎぬ)、麻やキビラ(注)の袴、見た目は涼しそうですが、これが大変!
麻はシワが寄るので、舞台後、霧打って、敷延し。
面倒臭いでっせ。

まあこんな苦労も、暑い時分に来てくれはるお客様への“サービス”やと思えば、安い事か。
来場お待ちしております。

(補注)
生平(きびら)
  イチビの繊維で織った粗い麻布。さらし、または染色して、衣服とする。
  滋賀県犬上郡高宮の産。        (広辞苑による)         



2004年7月2日

暑いでんなァ。梅雨の中休みというより、すでに真夏でっせ!
「ア〜、何か冷たいもの飲みたい」と思っていると、高校の同級生から“コロナ”ビールが届く。
このメキシコビールは、絶対にグラスについではダメ。
ラッパ飲みしないと美味しくない、不思議なビール。おためしあれ。

さて、明日から南座公演、山科閑居の前半に出演します。
通称“九段目”、大曲中の大曲です。
前半の登場人物は、「お石」 「戸無瀬」 (この二人、同年輩)。
それに娘の「小浪」 (八段めの道行で義母の戸無瀬から性教育を受けているので、処女でしょう)。
この三人の女性の語り分け、弾き分けは、なかなか神経をつかうところ。

なにしろ雪の山科。
この温気に寒気が表現できるでしょうか。
すでに夏バテ気味。
気を引き締めなければ。



2004年6月16日

明日から鑑賞教室で、千歳大夫君と寺子屋の前半、いわゆる「源蔵戻り」から「首実検」まで、勤めさせていただきます。
寺子屋という外題は、皆様ご存じの通り、いたってポピュラーなもので、「せまじきものは宮仕へ」など、耳にあると思います。

今回は、住大夫師匠にお稽古をつけてもらい、“息の詰め方”“間の持ち方”など、語っていない空間のムツカシさ等、教えていただきました。
「95へえ〜」位。

これだけの名曲ですから、どんな演奏をしても一応寺子屋には聞こえるでしょうが、緊迫感を出したり、情を伝えるという事は、並大抵な事ではないなと、改めて痛感!

反省と、感謝の気持ちで、明日からガンバリマス!!



2004年6月6日

いよいよ大阪も、三味線弾きにはつらい入梅となりました(とはいえ、私の誕生日は暦上の入梅の日)。
毎度「錦糸サイト」ごひいきいただきまして、ありがとう御座居ます。
「月に一度位、本人のコメント、のせたら」と、“剛腕管理人”ルネ氏の一言で、今月より、近況報告及び、舞台の見所、聞き所など、掲載させていただこうと思っております。
今後とも、よろしくね!

(ルネ註・決して決して、そんなぞんざいなお願いの仕方はしておりません〜。
みなさま誤解のないようお願いします〜)





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